昔、貧乏な大工がいた。なんのとりえもない男であったが、1匹の猫を飼って非常に大切にしていた。この男、バクチにこり、ついには家、屋敷を手離さなければならなくなった。
男は、猫に
「おまえを十年も飼い続けてきたが、こうなってしまっては、お前を飼っておくことができない。よその家にいって大事にしてもらえ。」
といって別れを告げた。
次の夏になるとなんと、かの猫が小判二枚をくわえてきて、その男に差し出した。猫にもらった小判で男はバクチをすると、今度は勝ちに勝って、家、屋敷を取り戻しただけでなく、一財産を残したという。 ―――― 生きものは大切にすべきである。
(佐野市史「民俗編」より)
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