気象教材の扱い方
 


 

平成12年度 高等学校初任者研修会 教科別研修(理科コース)テキスト
 
 

   目      次
1.海陸風を調べる
2.太陽放射エネルギーの測定
3.酸性雨の測定
4.自記気圧計の利用
5.自記温湿度計の利用
6.気象データー   dekitaくん
 
 
 
 

1.海陸風を調べる
(1)目的
  アメダスの気温、風のデータから日変化を調べ、海陸風の様子を調べる。

(2)方法
 ・関東地方のアメダス気温のデータから、等温線を引く。
 ・風向のデータから、海風と思われる所を鉛筆で囲む。
 ・越谷の気温、風向、風速の日変化をグラフにしなさい。
  2000年8月5日 越谷        資料提供 ウェザーニューズ社
 時刻  6時      8時    10時    12時    14時
 気温  25.8℃   28.5   31.8   33.9   29.9
 風向  −−−     NNE     E      E     ESE
 風速   0 m/s     1      1      2      3

 時刻 16時    18時    21時    23時  6日 1時     3時
 気温  30.7   29.6  26.8   23.3   23.1    23.0
 風向  ESE    SSE    W      W     NNE     −−−
 風速   2      2     3      1      1       0

(3)結果と考察
 ・海風または陸風が最も強いのは何時頃か。そのときの気温の分布はどうなっているか。
 ・海風と陸風に強さの違いがあるか、またその理由を考えなさい。
 ・海に面していない埼玉県でも、海陸風は見られるが、それはどんな時だろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2.太陽放射エネルギーの測定
(1)目的
 日射による水温の上昇から、太陽放射エネルギーの熱量を測定し、エネルギー問題について考え る。

(2)方法
ア.測定器の水槽に、水(40ml)を入れ、セットする。
イ.測定器を太陽光線に垂直になるように、設置する。
  (太陽光線が良くあたり、またまわりからの反射の少ないところを選ぶ)
ウ.1分ごとに水温を測定する。(15分〜20分ぐらい測定する)
エ.太陽光度を測定する。天気や風の様子を記録する。

(3)実験の記録

                                     
時間   0分   1分後   2分後   3分後   4分後   5分後   6分後
                                     
水温
                                     
時間  7分後   8分後   9分後   10分後  11分後  12分後  13分後
                                     
水温
                                     
時間  14分後  15分後  16分後  17分後  18分後  19分後  20分後
                                     
水温                                  
 
 

 水の量(ml)               太陽高度 
                                   

  雲、風の状態       
 
 
 

(3)結果と考察
ア.水温と時間のグラフを書く。

イ.グラフで直線の続いている部分を選び、その間の時間t(分)と温度上昇R(゜C)を求めなさい。

         t =    分     R =     ゜C
 
 

ウ.受熱面積 1cm2,1分間あたりの受熱量 E を求めなさい。
  (測定器の受熱面積S=36cm2 水の比熱1 水槽の熱量は無視する。したがっ て40mlの水が1゜C上昇したとき、40calの熱を受けたことになる)
 

       40 × R           40 × 
  E=  −−−−−−−−−−    =  −−−−−−−−−
       S  × t           36 × 
 
 

   =
 
 
 

エ.太陽定数や直達日射量の値などと比較し、考察しなさい。
 
 
 
 

オ.太陽定数から、地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーの量を計算しなさい。
  また、このことから、地球環境問題も考えに入れ、今後の人類のエネルギーの利用について、  考察しなさい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.酸性雨の測定
(1)目的
 酸性雨の測定を通し、地球環境問題について考える。

(2)方法
ア.試料(雨水、レモン果汁、水道水、蒸留水または純水)をビーカーに30mlづつ入れ、pH メーターで測定する。(pH試験紙の場合は、1ml程度で可能)
イ.水道水、蒸留水のビーカーに、レモン果汁を1mlづつ加える。pHを測定する。
ウ.さらに、レモン果汁を加え、pHを測定する。さらに、4mlまで繰り返す。

(3)結果と考察

                                  
試 料    蒸 留 水      雨  水     水 道 水     レモン果汁
                                         
 pH                                      
 
 

                                  
      レモン1ml添加    2ml       3ml        4ml
                                          
水道水
                                          
蒸留水                                       
 

ア.この雨水は、酸性雨であるか。また、酸性雨の原因について考えられることをあげなさい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

イ.レモン果汁を加えたとき、どうなったか。このことから、酸性化しやすい湖は、どんな湖であるといえるか。
 
 
 
 
 
 
 
 

4. 自記気圧計の利用 その1
(1)目的
  自記気圧計は、使用せずにしまってある学校が、多いのではないかと思います。気圧の変化を とらえることは、立派な教材になります。また、リアルタイムでの気圧変化から天気予報を出す こともできます。ぜひ、多くの学校で測定してほしいと思います。次にあげるものは、測定結果 の利用の教材化の一つです。他にもいろいろな使い道があると思いますので、工夫して下さい。

  自記気圧計の記録から、気圧変化と天気の関係を統計的に求める。

(2)方法
ア.毎日の正午の気圧を読み取り、前日との差を求める。
イ.次の気圧変化の回数を天気毎に数える。(パソコンを利用すると良い)

    気圧変化20hPa以上 上がる
     〃  10  〃   20hPa未満 上がる
     〃   5  〃   10   〃 上がる
     〃   5hpa未満の変化
     〃    5hPa以上  10hPa未満 下がる
     〃  10  〃   20hPa未満 下がる
     〃  20  〃  下がる
 

 (3)結果と考察
ア.各気圧変化ごとの天気確率を求める。

           その気圧変化の時の天気の回数
    天気確率 =×100 [%]
              その気圧変化の回数

                                  
                 晴れの確率    曇りの確率    雨の確率
                                  
気圧変化20hPa以上  上がる
                                  
    10〜20hPa 上がる
                                  
     5〜10hPa 上がる
                                  
     5hPa  未満
                                  
     5〜10hPa 下がる
                                  
    10〜20hPa 下がる
                                  
    20hPa以上  下がる                   

イ.気圧の変化から、明日の天気の確率を考えなさい。
 
 
 
 

  自記気圧計の利用 その2
(1)目的
 自記気圧計の記録から、気圧変化と天気の関係を見いだし、さらに天気図との関係を考察する。

(2)方法
ア.自記気圧計の記録から、毎日正午の気圧を読み取り、前日との差を求める。
イ.気圧の変化および天気図上の高気圧・低気圧の動きと、天気との関連を調べる。

 (3)結果と考察

                                    
 月 日     日     日     日     日     日     日     日
                                    
正午の気圧
                                    
前日との差
                                    
 天 気
      
天気図状況 
(高低気圧)
                                    
 月 日     日     日     日     日     日     日     日
                                    
正午の気圧
                                    
前日との差
                                    
 天 気
      
天気図状況 
(高低気圧) 
 

ア.気圧の変化と天気は、どうなっているか。また、天気図の高気圧低気圧の動きと、天気は、ど うなっているか。(どのようなときに雨が降るか)
 
 
 

イ.気圧の変化から、明日の天気を考えなさい。

   本日の気圧        hPa   昨日の気圧        hPa

   明日の天気        (理由                        )
                (                          )
                (                          )

                         (正解は24時間後に天気を見て下さい)
 
 
 
 

5.自記温湿度計の利用 
 1  壁掛け型自記温湿計の特徴
 従来の自記記録計に比べ安価であり、同じ予算で複数購入できる。また、消耗品の予算で買える価格である。また、軽くて持ち運びも楽で、壁に掛けられ場所をとらない。温度と湿度が、ほぼ同じ場所に記録され、温度湿度の関係が分かり易い。
自記温湿計を複数使っての実験
 長時間記録の必要な実験や観測に適している。授業での利用では、セットして次の授業にデータを整理するか、測定はあらかじめ行っておき、データの整理から授業で使うことになる。部活動での研究や、課題研究、総合的学習の時間などで利用価値が高いと思われる。
地球温暖化につての実験
 比較的小さな装置でも時間をかけることで、違いを調べることができこともある。条件をそろえることから、同時に測定することも必要である。
 2 目的
(1)地球温暖化の原因とされるCO2等で、実際に温度が上昇するか確かめる。
(2)緑地等の温度上昇を押さえる効果を調べる。
 3 方法
(1)CO2 水蒸気の温室効果を調べる
 水槽2個用意
  1 水蒸気による温室効果
   1つには、水を入れたコップをおく。(湿度100%)
   もう1つには、乾燥剤をいれる。
  2二酸化炭素による温室効果
   1つには二酸化炭素ガスを入れる。
   もう1つには、空気のままにする。     
  3 温度計を入れ、測定する
(2)場所による違い
  1つを緑地に温度計を設置し測定する。
  もう1つを裸地に置き、測定する。
 4 結果 
 (参考) 1階と3階の気温   最高     最低 (1999年7月26日〜27日)
               1階 35     33
               3階 33     28
 水蒸気の温室効果
  7月22日〜25日(平均)   最高     最低
     湿度100%にした水槽  35.5   32.8 
     室内(湿度52〜62%) 33.5   31.5
  8月4日            平均
     乾燥
     湿度100%
 緑地とベランダ
  7月28日〜8月1日(平均)
       最高    最低  35度以上の時間  30度以上の時間
 ベランダ  40.9  25.4   6.8      13.4
 庭(緑地) 42    23.5   3.8       7.8
  8月8日〜13日(平均)
       最高    最低  35度以上の時間  30度以上の時間
 ベランダ  40.6  25     6.0      10.7
 庭(緑地) 35.8  24.9   0.7       6.3
 
 
 
 
 

6.気象データー   dekitaくん(ウェザーニューズ社提供)
 海陸風
 アメダス 風向風速(関東) 2000年8月5日14時  資料提供 ウェザーニューズ社

 

 アメダス 気温(関東) 2000年8月5日14時  資料提供 ウェザーニューズ社

 アメダス 風向風速(関東) 2000年8月5日12時  資料提供 ウェザーニューズ社

 

 アメダス 気温(関東) 2000年8月5日12時  資料提供 ウェザーニューズ社

アメダス 風向風速(関東) 2000年8月5日6時  資料提供 ウェザーニューズ社

 アメダス 気温(関東) 2000年8月5日6時  資料提供 ウェザーニューズ社

  気象衛星 ひまわり   2000年8月5日12時  資料提供 ウェザーニューズ社

 

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